チャ・インピョによる撮影日記

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◉試写にて:韓国映画のスタッフ(2008年4月30日)

 昨夜、クロッシングの最後の技術試写に行ってきた。
公開まで約1ヵ月を残した昨日は2008年4月30日だった。
嬉しい顔ぶれがそろった。
2007年の夏を共に過ごしたクロッシングの現場スタッフたちだ。
試写会が終わった後、私達は映画の感動を噛みしめながら、よくやったと自画自賛した。

久しぶりに会った嬉しさから、クロッシングのスタッフの一人にこんな質問をした。

「クロッシングが終わってからはどう過ごしていたんですか?」
「まだ何もせず休んでいます」

もう一人にも同じ質問をした。
「いかがお過ごしでしたか?」
「何もしてません」

また違うスタッフは映画ではなくドラマの仕事を始めたという。
韓国の映画界で名前をあげたら、誰もが知っている程の有名なスタッフたちだが、クロッシングの撮影が終わった2007年9月から今まで6ヶ月の間、何もしていないというのだ。
いや、何もしていないといったら語弊があるかもしれない。次の仕事を探しているところだ。
現在、撮影中の韓国映画は4本ある。
その4本に参加していない数千人のスタッフ達は皆仕事を探しているのだ。

韓国の映画スタッフ達…彼らは
最もよく働き、最も給料が安い。
一番に早起きし、一番遅く就寝する。
危険な仕事も、危なかったという言葉は撮影後にしか口にせず、お腹が減っていても、そのことは食事後にならないと口にしない。
風が吹くと一番にその風を受け、雨が降ったら一番びしょ濡れになる。
誰よりもよくしゃべるが、誰よりも無口だ。

韓国のスタッフ達…彼らは重々しく沈黙するが繊細に感じている。
沈黙の中のその感情は宇宙人が宇宙遊泳するかのように漂って、彼らの中で共有される。

分野も違い、個性も違い、事情も違う、韓国の映画スタッフ達の共通点が一つある。
彼らは映画が終わって最後のクレジットが消えるまで席を立たない。
その瞬間は彼らにとって、長い沈黙の中での感情を共有し、慰めあう大切な時間だからだ。
スタッフ。とても大切で必要な存在だが…昨夜は複雑な気持ちだった。




◉いつか

 クロッシングの製作チームは8月半ば、モンゴルの首都ウランバートルに向かった。
これから一ヶ月ウランバートルの一帯とゴビ砂漠골を行ったり来たりしながら撮影をする。
映画の前半で登場する北朝鮮の村を撮影していた日はとても暑い日だった。
衣装チームはモンゴルで俳優志望の子どもたちを数十人集め、北朝鮮の学生服を着せた。
モンゴルの子どもたちが既に練習していた北朝鮮の少年短歌を歌い行列になって行進する。
同じ場面を何度も取り直しても子どもたちは嫌がらない。
子どもたちが大人よりよく我慢強い。

一日中、熱帯夜の中で撮影は続けられた。
自動車が通る度にやせた大地は腹を立て、目に口に耳に土を飛ばしてくる。
砂埃で俳優もスタッフも皆真っ白になってしまった。
撮影が終わって宿に戻る。
韓国よりも不便ではあるが“ちょろちょろ”出るお湯でシャワーし、足を伸ばして休める所だ。
母が持たせてくれたきな粉と、妻が持たせてくれた干し明太にコチュジャン(唐辛子味噌)をつけて少しずつ食べ眠りにつくのだった。

宿所に戻る車の中で窓の外を見てみると、夕日がまさに沈もうとしていた。

「そうか、お前は今日もその役目を終えたんだね.」

そうだ。太陽は間違いなく今日も役目を果たした。
朝に顔を出し世界中を照らしてくれた。夕方になり暮れる。
大地の果てで、ぎりぎりにその光をのぞかせる赤い太陽を見つめていると韓国にいる家族を思い出した。

家に電話をした。3歳になった娘イェウンの話をしてくれた。
最近、イェウンは一日に何度もドアが開く音を聞いて“パパ!”といいながら玄関に走って行くという。父親がどこで何をしているのかイェウンは知らない。ただ、ある日、目を覚ましたらいつもそばにいたパパがいなくて寂しく感じただろう。なぜかも知らずパパを待つ娘に申し訳ない気持ちになった。

あの太陽と共に時間も流れていく。
いつかは私の娘も映画が何であるか、モンゴルがどこにあるのか、脱北者がどんな人々なのか分かる日が来るだろう。
いや、脱北者なんて言葉がなくなる日が来たらいいのに。
いつかはイェウンも誰かを可哀想に思い共に涙する美しい娘になることだろう。
いつの日か、美しい娘になったイェウンが「どうしてパパは2007年の夏、一緒に遊んでくれなかったの?どこ行ってたの?」と尋ねたならば...「パパはあの時やるべきことがあったんだ」と答えよう。




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